たった一人だけ確実に欠けている世界
人は、特にお互いすぐ近くに暮らしている人達は自分達がみな同じ世界に住んでいると信じている。
お互いのことを少しくらい知らないことがあっても、私たちは同じ場所で、同じこの世界に暮らしていると思っている。
しかし本当にそうだろうか。
例えば今の自分が暮らしている世界からたった一人誰か身近な人が居ない世界は、今の自分が暮らしている世界と同じ世界だと言えるだろうか?
たった一人でも居ないということは、身近な人が一人でも欠けているということは同じ世界とは言えないだろう。
あなたから見た世界と、隣に居る人が見ている世界、それぞれの世界には確実に絶対的に欠けている人が居るのだが、多くの人はそのことに気付いていない。
実は皆それぞれ違う世界に生きている。
そのことに気付いていない。
同じ世界に生きることはできない。
なぜならあなたはあなたで、私は私という物理的に別の存在としてこの世界を見ているからだ。
つまり、隣の人が見ている世界にはその隣の人本人が居ない。
あなたが見ている世界にはあなた自身は居ない。
当然の話なのだが、もう一度その状態を想像してみて欲しい。
隣の人が見ている世界、隣の人がいつも暮らしている世界には常にあなたが他人として、一人の人間として活動している。
しかしあなた自身の世界にはその隣の人が見ている、他人としてのあなたは居ない。
あなたの世界には、隣の人が赤の他人として暮らしている世界しかない。
この違いは実は大きい。
例えばあなたがTVでよく見て知っている一人の有名人。
あなたにとっては超有名人でとても違う世界に住んでいる、手が届くはずもない神様みたいな存在だ。
が、その人自身が生きている世界にはそんな有名人はいない。
この世界はすべてそうなっている。
誰から見る世界もすべてたった一人居ない。
それぞれ違う、たった一人だけ確実に欠けている世界に暮らしている。
他人が見ている私という人物は、私の世界には居ない。
あなたの暮らしている世界にも、あなた自身は居ない。
私が暮らしている世界にはあなたは他人として存在しているが、あなたの世界には他人のあなたは居ない。
その違いは確実で、大きな違いだ。
でも人はそのことに気付いていない。
ある日ふとそのことに気付いても、なぜかすぐに忘れてしまう。
不思議なことに。